*[本]安彦良和の戦争と平和


主に安彦良和のマンガについて、本人のインタビューを織り交ぜながら
深掘りしていった評論である。


私はガンダムの「THE ORIGIN」ぐらいしか読んでいなかったので、歴史
ものの解説を読んだら、ちょっと興味がわいてきた。


ただ、著者の考察に関しては、ちょっと考えすぎでは? と思うところ
もあって全面的に賛成できないけれど、安彦良和の証言がとれている
ところは良かった。


そのあたりを抜き出してみる。

安彦 ガンダムとは本当に幸福な出会いをした、という気持ちがあります。
だからじつは、『機動戦士ガンダム』にずっとこだわってきて、『THE ORIGIN』の
ほうで『機動戦士ガンダム』全体を映像化することには今でもこだわっている。
 まあ一応対外的には、本編の映像化はやらないってことになっているんだけど、
じつはまだ望みを持っています。ある段階まで行ったら、力業でも勝ち取ろうと。
そういう気持ちがある。自分の年齢との相談も含めてね。
 やっぱり『機動戦士ガンダム』があって、劇場版があって、『THE ORIGIN』が
あって、それなのに『THE ORIGIN』の本編部分は映像化されていない。それは
非常に腑に落ちないんですよね。それらが全部そろって、受け取り手に対して、
さあどれを取りますか、そう問いかけたい気持ちがある。
 そうなると、映像として完結してない『THE ORIGIN』はとても不利です。
マンガ化しただけではダメなんです。僕は今でもアニメの世界に対する未練は
ないんだけども、『機動戦士ガンダム』の再アニメ化、『THE ORIGIN』本編の
アニメ化については、今もものすごく未練を持っています。それ以外のアニメを
やる気はまったくないですね。(p92-93)


私は『THE ORIGIN』のアニメ化されたやつをいくつか見て、嫌いでは
ないけれども、やはり富野由悠季監督の突き放した感じの方がいいな、
とは思う。
良かれ悪しかれ、安彦版のガンダムは情がこもっているのではなかろうか。

安彦 前に押井さんの監督した『イノセンス』を見て、ものすごく違和感があった。
彼と僕とは年齢がほんの4年しか違わないけども、その何年かがけっこう大きい。
押井さんは「遅れてきた全共闘」で、たとえば彼は山本直樹のマンガ『レッド』
2巻(2008年)のあとがきで対談をしてて、全共闘運動というのは「運動部の
合宿みたいなもの」と言っていた。押井さんは高校生として盛り上がったんだ
ろうけど、ちょっと本戦には間に合わなかった。この差だよね。
 それを『イノセンス』とか、特に『攻殻機動隊』なんかで若造たちに対して
「俺は政治わかってるよ」みたいな見せかけのポーズを作るのはやめてほしい。
押井守は天才だ、と僕はかなり早い時期に、『うる星やつら2 ビューティフル・
ドリーマー』や『天使のたまご』の段階でもう無条件に認めていたんだけど、
その後の政治的に振る舞おうとする仕事は嫌いです。とはいえ、高校生であった
にしても全共闘運動の時代に微妙に接していたんで、その辺りに彼の複雑な揺れ
があるんじゃないですかね。(p123-124)


私も押井守の後期の仕事については、あまり面白くないな、と思っている。
政治的かどうかはよく分からなかったが、ペダンティックすぎるのでは
ないかと。



最後にどうでもいいことを書くが、安彦良和の描く人間の太ももは、妙に
エロティックである。女性もそうだが、男性の太もももエロい。
あれはどういう感じで描いているのだろう。