さよならの朝に約束の花をかざろう

佳作だと思う。
母親からの無償の愛情を受け、大人になっても関係性がうまくいっている
人にとっては、とても感動できる映画だろう。
が、私のような女性嫌悪の人間にとっては見ていてしんどい映画でもあった。


この作品で、男性は愚かで好戦的で女性の気持ちが分からない存在として
描かれている。
それでも女性は強いのだぞ、というメッセージがあると受け止めたのだが、
いろんなメタファーがあるので、解釈は多様だろう。



大人になっても、いつまでも自分を子供扱いする母親、というのはよくある
と思うけれど、この映画の主人公はそういう人なのだろう。


思春期にそういう母親に反発することもよくあることで、映画の中でもそれは
描かれている。


で、結婚して自分が父親になって、ようやくその呪縛から逃れて素直に母親に
接することができる、という解釈でいいのだろうか。


普通ならば母親が先に死んでしまうので話は終わるのだが、この作品では
長命な種族が母親代わりなので、子供の方が先に老人になって死ぬのである。
死ぬときになって、若い姿の母親がやってくるのはちょっと怖い。
一生を母親に支配されているようではないか。



息子が父になるという物語のために、他の男性キャラクターは無能な人間に
なっている。特に国王と王子は父でありながら何の責任も負わない。
彼らがどういう最後を迎えたのかも語られない。


赤ちゃんを拾ったときに登場する、長命種と人間のハーフの男は、実に都合の
いいときにだけ現れては消える。狂言回しという役割だろうけど、かなり強引だ。


軍人も自分の職務に忠実だが、幽閉された長命種の后を救うことはできない。
その長命種の后も、最後は自分の娘を捨てるのである。
女性にとって息子は大事だが娘はそうでもないのだろうか。



ドラゴンが赤くなって燃え尽きて死ぬ病気についても、結局何の説明もなく
終わった。
きちんとした設定はあるのだろうけど、一度鑑賞しただけでは理解できなかった。



思いついた感想はこんなところである。
鉄を作る工業都市のあたりは、かなりジブリっぽいというか宮崎駿テイスト
だった。もはや日本のアニメの伝統みたいになっていると思う。