響~小説家になる方法~ 8 (BIG COMIC SUPERIOR)
- 作者: 柳本光晴
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2017/12/27
- メディア: コミック
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興味を持って単行本を買ってみた。
15歳の女子高生が芥川・直木賞をダブル受賞するというマンガみたいな
話だった。マンガだが。
物語の構造は、私の読んだマンガに当てはめれば「ガラスの仮面」に
近い。響が北島マヤで凛夏が姫川亜弓で涼太郎が速水真澄である。
ただし、キャラクターがみんな歪んでいる。
なぜあんなにマウントをとりたがる人が多いのか不思議なのだが、
響の暴力性を際立たせるために、わざとそうしているのかもしれない。
このまま物語が進むとしたら、響はあまりの才能に飲み込まれて、
破綻するしかないと思う。涼太郎はそれを恐れているのだろう。
というよりも、このマンガの作者自身がそうなりつつあるのを、
7巻から8巻の絵の荒れから感じる。
実写映画化されるそうだが、はたしてどうなることやら。
↓
今まで音楽の天才を描いたマンガはいくつかあって、劇中でそれを
表現するときは、読者に想像させていた。
マンガは音が出ないのでそうせざるを得ない。
だが、小説を扱ったマンガでもこの手法を使うとは思わなかった。
劇中で響の小説の文章が読者に示されることはない。
どういう作品かはほのめかされるが、具体的な文体とかは今のところ
出てきていない。
登場人物が読んで打ちのめされるのを見せることで、すごい小説だと
表現しているのである。
グルメマンガやスポーツマンガだと、実際に料理や技を描かない
わけにはいかないから、この手法は使えないのだが、小説なら
いけると証明している。画期的なことかもしれない。
↓
気になるのは、平凡さの嫌悪である。
2巻に中原愛佳という30歳の作家が出てきて、響の小説に打ちのめされて
書くことをやめるエピソードがある。
そのとき、彼女の平凡だが幸せな未来がナレーションで語られて終わる。
この処理の仕方に、なんともいえない悪意を感じた。
主人公の鮎喰(あくい)という名字はそこから来ているのか、と勘ぐった
ぐらいだ。
それ以降も、平凡な人の愚かさみたいなものが主に加代子というキャラクター
によって描かれる。
中二病か、と切り捨てることは簡単だが、その中二心があるからこそ、
この作品は面白いのだろう。
当たり前だが、作者以上に頭のいいキャラクターを作品には出せない。
天才を描くマンガで、どのあたりに着地点を見つけるのかは、これからの
展開しだいだろう。