BSプレミアムで放送していた新海誠のアニメを3本見た。
「秒速5センチメートル」と「ほしのこえ」と「言の葉の庭」である。
「ほしのこえ」は、アマチュアでこれを作ったのはすごい、以上の感想はないけれど、
お金と人を使えるようになった「秒速5センチメートル」や「言の葉の庭」は、
実写と見間違うような緻密な美術やテンポの早いカット、詩情あふれる画面構成や
心理描写が素晴らしかった。
そして執拗に「破綻する遠距離恋愛」を描いており、たぶん新海誠の重要なモチーフ
なのだろう。
あと、女性に対する絶望みたいなものも垣間見えるのだが、これはこちらの考えすぎ
かもしれない。
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なっていて、最初から主人公の少年に勝ち目はない。
加えて最後には女性のほうが四国に帰ってしまい、場所も離れてしまう。
まあ、宇宙に比べたら近いし、自分が靴職人になれたら会いに行ってみよう、みたいな
希望ある終わり方になっているけど、たぶん幸せにはならないでしょう。
そういう切ないのが新海誠の作品のいいところだ、と思うけれど、もう少し踏み込んで
濡れ場のひとつでもあって良かったような気もする。
(あ、でも足を採寸しているのはエロティックだった)
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なんか新海誠の作品を心から絶賛できないのは、最後に流れる音楽のせいだ。
「秒速5センチメートル」は山崎まさよしの“One more time, One more chance”で、
「言の葉の庭」は大江千里をカバーした秦基博の“Rain”である。
どちらも名曲で、特に1988年の“Rain”を2013年の作品に持ってくるセンスは見事だ。
(この曲が入っている大江千里の『1234』というアルバムは名盤である)
実際、最後に山崎まさよしや秦基博の歌声が流れると感動してしまう。
が、それはアニメで感動しているのか、音楽で感動しているのか、ちょっと微妙な
ところだ。
私の単なる主観だが、映像作品で音楽は重要ではあるが、あくまでも映像が主で
音楽が従である。
それが逆転したものは単なるプロモーションビデオではないだろうか。
新海誠のアニメは、プロモーションビデオではないけれど、音楽に語らせている部分が
大きすぎやしないか、と思う。
(余談だが「灰と幻想のグリムガル」も挿入歌で語らせており、私は白けてしまった)
もし、最後に流れる曲を、このアニメのために書き下ろした新曲にしたらどうだろうか。
最初から名曲というアドバンテージなしに、同じように感動できるかどうか。