Boaz2016-03-26

BSプレミアムで放送していた新海誠のアニメを3本見た。
秒速5センチメートル」と「ほしのこえ」と「言の葉の庭」である。


ほしのこえ」は、アマチュアでこれを作ったのはすごい、以上の感想はないけれど、
お金と人を使えるようになった「秒速5センチメートル」や「言の葉の庭」は、
実写と見間違うような緻密な美術やテンポの早いカット、詩情あふれる画面構成や
心理描写が素晴らしかった。


そして執拗に「破綻する遠距離恋愛」を描いており、たぶん新海誠の重要なモチーフ
なのだろう。
あと、女性に対する絶望みたいなものも垣間見えるのだが、これはこちらの考えすぎ
かもしれない。


劇場アニメーション『言の葉の庭』 DVD

劇場アニメーション『言の葉の庭』 DVD

言の葉の庭」についてもう少し書くと、男女の距離が場所ではなく時間つまり年齢差に
なっていて、最初から主人公の少年に勝ち目はない。
加えて最後には女性のほうが四国に帰ってしまい、場所も離れてしまう。


まあ、宇宙に比べたら近いし、自分が靴職人になれたら会いに行ってみよう、みたいな
希望ある終わり方になっているけど、たぶん幸せにはならないでしょう。
そういう切ないのが新海誠の作品のいいところだ、と思うけれど、もう少し踏み込んで
濡れ場のひとつでもあって良かったような気もする。
(あ、でも足を採寸しているのはエロティックだった)



なんか新海誠の作品を心から絶賛できないのは、最後に流れる音楽のせいだ。
秒速5センチメートル」は山崎まさよしの“One more time, One more chance”で、
言の葉の庭」は大江千里をカバーした秦基博の“Rain”である。


どちらも名曲で、特に1988年の“Rain”を2013年の作品に持ってくるセンスは見事だ。
(この曲が入っている大江千里の『1234』というアルバムは名盤である)


実際、最後に山崎まさよし秦基博の歌声が流れると感動してしまう。
が、それはアニメで感動しているのか、音楽で感動しているのか、ちょっと微妙な
ところだ。


私の単なる主観だが、映像作品で音楽は重要ではあるが、あくまでも映像が主で
音楽が従である。
それが逆転したものは単なるプロモーションビデオではないだろうか。


新海誠のアニメは、プロモーションビデオではないけれど、音楽に語らせている部分が
大きすぎやしないか、と思う。
(余談だが「灰と幻想のグリムガル」も挿入歌で語らせており、私は白けてしまった)


もし、最後に流れる曲を、このアニメのために書き下ろした新曲にしたらどうだろうか。
最初から名曲というアドバンテージなしに、同じように感動できるかどうか。


若い人で大江千里の“Rain”を知らなかった人が「言の葉の庭」を見たときの感想を
聞いてみたい。