キラキラネームの大研究

キラキラネームの大研究 (新潮新書)

キラキラネームの大研究 (新潮新書)

最近の子供の名前で、常識では読めないようなものがあって、それらをキラキラネーム
とかDQNネームとか呼んでいる。


ネット上の冗談なのか本当に存在するのか、という話から始まり、最終的には日本人の
漢籍の教養の有無にまでつながっていく。
学者ではない人が書いたので、やや甘いところもあるが、面白かった。
(特に章末コラムで、日本以外でも変な名前をつける国があるのは驚いた)


よく、外国人のような名前なら森鴎外が子供につけている、という話がでてくるが、
森於菟という名前は、実は漢籍の「春秋左氏伝」の記述からとっている、という。
できれば他の子供の原典も調べてほしかったが、さすが鴎外と思った。


あと、1948年1月1日から1951年5月25日の間は、名前に使える漢字が最も制限されて
いた時期だそうで、「稔」も「弘」使えなかったのだそうだ。
これってミステリ小説のネタになりそうな気がする。


最後に、p38 の5行目と6行目の両方に「奏(かなで)」があるのは、おそらく誤植では
ないでしょうか。



私にとって名前で読み方を覚えられないのは、陸軍軍人の山下奉文(ともゆき)
である。普通「やすふみ」と読むと思うのだが、どういう理由で「ともゆき」なのか。
阿南惟幾(これちか)も読みにくいが、これは何となく記憶できた。
あと、外務大臣だった重光葵(まもる)も間違えそうになる。


戦時中の人の名前は、あまり試験問題にならないから、その方面が好きな人でないと
読めない人は多いのではなかろうか。



そうそう、本書を読んでいたら p59 に「キラキラネームの“方程式”」という言葉が
出てきた。名づけ方の法則、という意味で使われている。


よく「恋愛の方程式」とか「勝利の方程式」という言い方をする人がいる。


本来は数学の用語で、厳密には、=で結ばれた式、という意味である。


たぶん「○○の方程式」を使っている人は“確実に成功する秘訣”みたいなことを
言いたいのだろう。
それを言うなら、方程式ではなく、せめて「○○の公式」にすべきだと思う。


が、公式だと、誰でも知っていて手軽に使える、というニュアンスがあって、秘訣
ではなくなる。なんというか、公式は学校で先生が教えるものであって、言葉として
安易なイメージがあるのではないか。


一方、方程式になると、ちょっと数学的に踏み込んだ感じがするし、ある変数を
当てはめたら確実に答が出る、という体験も手伝って“絶対にうまくいく方法”
みたいな印象を持ったのではなかろうか。


そして、こういう言い方をするのは、ほとんど関西圏の人である。
である、と何の根拠もなく言ってしまったが、関東地方の人が使っているのは
あまり聞かない。


よろしかったら、周りの人に訊いてみたらどうだろうか。