日本のアニメは何がすごいのか

さすがに今でも、日本のアニメが海外で売れていると信じている人は
いないと思うが、クールジャパンの掛け声で踊らされた人がいたら、
良い鎮静剤になる本だと思う。


とはいえ、もう少し話を煮詰めてほしかった。
現状分析にも食い足りない部分がある。


良かったのは、著者が実際に見たことを書いてくれている部分で、
世界はどのようにアニメを見ているのか、体験談やデータの裏付けが
あったので分かりやすかった。



結局、世界と戦うにはディズニーを相手にしなければならない、という
ことである。


日本のアニメは、ジブリを別にすれば、最もとんがっているのは深夜
アニメである。
ターゲットは日本の成人男性と女性の一部で、敷居は高いが楽しみ方が
分かると世界で最もピーキーな作品を見ることができる。


一方、ディズニーは分かりやすさと見終わったときの幸福感を全面的に
押し出しているので、性別を問わずほとんどの年齢層が安心して見る
ことができる。


つまり、日本の深夜アニメはスポーツカーのようなもので、ディズニーは
大衆車のようなものだ。
どちらが多く売れるかは自明のことである。



じゃあ日本もディズニーのようなものを作って売りだせばいいか、と
いえば、なかなか難しいだろう。
ディズニーと同じようなものを作ったところで、向こうに一日の長が
あるし、販売網も抑えられている。


それに、普遍性を追求するのが、どうも日本人には苦手なように見える。
いや、優れた日本のアニメにももちろん世界中に通用する普遍性はある
のだが、それが分かりやすく表に出ていないのだ。


ディズニーのように、これが普遍性ですよ、とあからさまに出していると、
なんかバカみたいに見えてしまうのが日本人の感覚なのかもしれない。



ここでカギになるのは、日本のアニメは1話30分を毎週放送する、という
スタイルである。これは海外にはないらしい。
手塚治虫のテレビアニメ「鉄腕アトム」が最初だそうだ。


米国のドラマでは、毎週1時間もので連続して放送するものがいくらでも
あるのに、なぜアニメはそうしないのか。
それは、アニメは子供が見るもの、と思い込んでいるからだろう。


ここらで日本が、アニメは大人が見てもいいし、萌えてもいいんだよ、と
教えてやるべきだろう。
そのくらいの上から目線でないと、ディズニーと互角に戦うことはできまい。


もし輸出用のアニメを作るなら、米国のドラマのような内容の作品を
作るべきだろう。
そこから徐々に日本の土俵に引っ張りこんでいく作戦が有効かと思う。