- 作者: 山根明弘
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/09/19
- メディア: 単行本
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この一冊で十分だと思う。
著者は福岡県の相ノ島で、7年間にわたってノラネコを調査した
実績があり、その研究成果がいくつか披露されている。
その中の、ネコの交尾について、こんなことが書いてあった。
メスの発情は、数匹のメスで同時におこることがあります。そのなかには、
たくさんのオスに囲まれて求愛を受けるメスもいれば、あまり求愛されない
メスもいます。その違いは、メスの若さや繁殖の経験のようです。仔ねこを
産み無事に育て上げたことがない、あるいはそういう経験の少ない若いメスは、
オスにとってはあまり魅力がないようです。それとは逆に、これまで何度も
繁殖し、仔ねこを何匹も無事に育て上げたことのあるメスは、たくさんの
オスから求愛を受けることになります。 (p 76 - 77)
ノラネコ社会では、熟女の方がモテるようなのだ。
さらに、ネコのメスは意外な行動をすることがあるという。
発情メスに求愛しているオスたちは、発情が続く限り、昼も夜も関係なく、
メスについてまわります。メスが全く動こうとしない膠着状態が、何時間も
続くと、オスも連日の求愛の疲れからか、その場で眠り込んでしまうことも
よくあります。ドラマティックな展開は、多くの求愛オスが眠り込んでしまった
その時に起こります。メスはゆっくりとした動作で立ち上がり、オスたちに
気づかれないようにその場からそっと移動し、ある程度の距離まで離れると、
いきなりダッシュして家と家の間の狭い隙間を駆け抜けてどこかに行って
しまいます。 (p 157)
幸運にも読みが当たって、メスのダッシュ直後の行動を観察できたことも
あります。そこで見られたのは、驚くべき行動でした。それまでメスには
全く近づくことのできなかった遠征オスとの交尾でした。その日は、メスの
近くに陣取る優位オスから何度もしつこく交尾を促されても、拒否し続けて
いたメスです。しかし、この遠征オスに対しては、自ら交尾を受け入れる
姿勢をとって、積極的にそのオスと交尾を行っていました。 (p 158)
後にDNA鑑定を行ってみると、メスにとって交尾の約8割は同じグループの
オスによるものなのに、産まれてきた仔ネコの父親の7割は、グループの外
から来た遠征オスということが分かったそうだ。
おそらく、強いオスばかりと交尾するよりは、遠くからやってきたオスと
交尾した方が、遺伝子の多様性が残せるからではないか、と結論づけていた。
人間にも当てはまるかもしれない。
他にも、オスねこの同性愛行動についての記述もあり、腐女子の人も
バッチリ(?)である。
↓
つい交尾のところばかり紹介してしまったが、他にも、なぜ日本のネコには
シッポの短いのが多いのか、とか、死ぬときに姿を消すというのは本当か、
などの疑問にも答えているので、ネコ好きな人はぜひ読んでいただきたい。