愛と暴力の戦後とその後

女性作家が、日本の近現代史で語られていないことを掘り起こす作業を
綴ったもので、非常に面白かった。


作家だからか、冒頭と最後が妙に文学的なので戸惑うかもしれないが、
第2章からギアチェンジしたように面白くなっていく。


マンガやテレビドラマなどのサブカルチャーを補助線にして、戦後の
日本がどのように変容していったのかを考えていくところが、ぐいぐい
読めてよかった。



それと、第7章で、作者の家の近所の公園を改修するにあたり、近隣の
住民で予算委員会を作って話し合うエピソードが語られていて、ここ
だけ全体からちょっと浮いた感じがしたのだが、面白かった。


というか、こんな理不尽でカフカ的な委員会が、いまも普通に運営
されているのが恐ろしかった。
本当に議論をした上で結論を出す会議が、はたして日本にどれだけ
あるのだろう、と不安になる。


こういう部分は、いつからか分からないけれども、全く変化して
いないんだな、ということがよく分かったし、民主主義なんて
ものが根付くこともなかろう、と絶望的にもなった。



順番は逆かもしれないが、私はこれを読んでから「東京プリズン」を
読んでみたくなった。


それにしても、「愛と暴力の戦後とその後」というタイトルはどうにか
ならなかったのか。
せっかくの名著が台無しである。