古寺巡礼

古寺巡礼 (岩波文庫)

古寺巡礼 (岩波文庫)

朝日新聞の読書欄で、スマイレージ和田彩花さんが「思い出す本 
忘れない本」というコーナーで和辻哲郎の古寺巡礼を紹介していた。
推しメンが読んでいるのだから俺も読まねば、と古本屋で買った。


難しい。
大学院生に、基本的な文献は全部読んでるよね? という前提で話を
されているような感じ。
通読するのに苦労した。


巻末の解説を読むと、初版では一人称が「わたくし」ではなく「僕」に
なっており、改訂版でかなり削った部分があることが分かった。
その削った部分の一部を読むと、むしろこちらの方が分かりやすいと
いうか、感動が伝わりやすい。


初版はちくま文庫に収録されているという。

初読者にはこちらをお勧めする。



古寺巡礼を読むと、昔のインテリは褒め方がうまいと思った。
欠点をあげつらうのは簡単だが、美点を詳述するには教養がいる。
例えば薬師寺の本尊薬師如来を描いた部分を引用してみよう。

 この本尊の雄大で豊麗な、柔らかさと強さの抱擁し合った、円満そのものの
ような美しい姿は、自分の目で見て感ずるほかに、何とも言いあらわしようの
ないものである。胸の前に開いた右手の指の、とろっとした柔らかな光だけでも、
われわれの心を動かすには十分であるが、あの豊麗な体躯は、蒼空のごとく
清らかに深い胸といい、力強い肩から胸と腕を伝って下腹部に流れる微妙に
柔らかな衣といい、この上体を静寂な調和のうちに安置する大らかな結跏の形と
いい、すべての面と線から滾々としてつきない美の泉を湧き出させているように
思われる。

(イメージ映像は熊井ちゃんにしてみました)


アイドルを形容するのも、かくありたいと思う。


なお、古寺巡礼に法隆寺の柱とギリシャのエンタシスを比較している
部分があるが、これは井上章一の「法隆寺への精神史」で否定されて
いたと思う。