大河ドラマなどで合戦のシーンがある。
たいてい俯瞰で撮影して、主人公に寄っていき、数分で終わる。
そんなもんだろうと思っていたが、実際の合戦はどうだったのか。
実は我々は何百人もの人間どうしが、刀や槍で本気で殺しあう情景を
見たことがない。
近代以降の戦争は、機関銃などの火器が導入された。
それまでの数万年は、基本的に人力で戦っていたはずである。
重い刀や槍を振り回して人を殺傷することは、とても体力がいる。
人間は無限に動けるわけではないから、どこかで息が切れる。
ロードワークで鍛えたプロボクサーでも、3分戦って1分休むことを
何度も繰り返したらフラフラになる。
では、合戦はどういう感じで殺しあっていたのだろうか?
スポーツではないので、時間や対戦人数が決まっているわけではない。
とりあえず目の前の敵を殺しても、次から次へとやってきたら絶対に
殺される。
どんなに鍛えていたとしても、お互いに1時間も殺し合いを続けて
いたら、変な話だが休憩が必要だろう。
もしかしたら、そんなに時間がかからずに決着がつく場合がほとんど
だったのかもしれない。
同数で同じ強さの人間が戦っていたとしても、ある均衡が崩れたら
いっぺんにどちらかが制圧してしまうのではないか。
そういう数学的なシミュレーションをコンピューター上で見たような
気がする。
つまり、強い武将というのは、基本的に大戦力で戦いに挑むか、
均衡を崩すことに長けている人のことを言うのだろう。
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黒澤明は、たぶん本気でそういう合戦を撮影したかったのだと思う。
晩年の戦国絵巻ものは、予算が足りなくてああなってしまったものの、
本人のイメージはもっとすごかったはずである。
同じような欲望を持った映画監督にスピルバーグがいる。
彼は「プライベート・ライアン」でそれを実現させた。
CGを使った近代戦だから可能だったのだと思う。
中国映画はどうか。三国志を描いた作品をいくつか見たが、なんと
いうか生々しさが足りないような気がした。
中国人が本気で殺し合ったら、こんなもんじゃないよね、というか。
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結局、邦画では「七人の侍」の野武士との合戦シーンが最もリアルな
戦いを描いているということか。
日本は人もお金もないので、これ以上の映像は作れないだろう。