Boaz2014-02-04

大河ドラマなどで合戦のシーンがある。
たいてい俯瞰で撮影して、主人公に寄っていき、数分で終わる。
そんなもんだろうと思っていたが、実際の合戦はどうだったのか。


実は我々は何百人もの人間どうしが、刀や槍で本気で殺しあう情景を
見たことがない。


近代以降の戦争は、機関銃などの火器が導入された。
それまでの数万年は、基本的に人力で戦っていたはずである。


重い刀や槍を振り回して人を殺傷することは、とても体力がいる。
人間は無限に動けるわけではないから、どこかで息が切れる。
ロードワークで鍛えたプロボクサーでも、3分戦って1分休むことを
何度も繰り返したらフラフラになる。


では、合戦はどういう感じで殺しあっていたのだろうか? 
スポーツではないので、時間や対戦人数が決まっているわけではない。
とりあえず目の前の敵を殺しても、次から次へとやってきたら絶対に
殺される。


どんなに鍛えていたとしても、お互いに1時間も殺し合いを続けて
いたら、変な話だが休憩が必要だろう。


もしかしたら、そんなに時間がかからずに決着がつく場合がほとんど
だったのかもしれない。
同数で同じ強さの人間が戦っていたとしても、ある均衡が崩れたら
いっぺんにどちらかが制圧してしまうのではないか。
そういう数学的なシミュレーションをコンピューター上で見たような
気がする。


つまり、強い武将というのは、基本的に大戦力で戦いに挑むか、
均衡を崩すことに長けている人のことを言うのだろう。



黒澤明は、たぶん本気でそういう合戦を撮影したかったのだと思う。
晩年の戦国絵巻ものは、予算が足りなくてああなってしまったものの、
本人のイメージはもっとすごかったはずである。


同じような欲望を持った映画監督にスピルバーグがいる。
彼は「プライベート・ライアン」でそれを実現させた。
CGを使った近代戦だから可能だったのだと思う。


中国映画はどうか。三国志を描いた作品をいくつか見たが、なんと
いうか生々しさが足りないような気がした。
中国人が本気で殺し合ったら、こんなもんじゃないよね、というか。



結局、邦画では「七人の侍」の野武士との合戦シーンが最もリアルな
戦いを描いているということか。
日本は人もお金もないので、これ以上の映像は作れないだろう。