ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗 (講談社現代新書)
- 作者: 円谷英明
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/06/18
- メディア: 新書
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作っていた円谷プロが、一族の手から離れてしまうまでのいきさつが書か
れている。
著者は円谷英二の孫にあたる六代目社長の円谷英明で、主に三代目社長の
円谷皐の経営能力のなさを語っている。
もっとも、一方的な手記なので、それぞれの立場からは別の言い分もある
だろう。
そこは割り引いて読む必要がある。
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身も蓋もない言い方をすれば、無能な経営者たちが過去の遺産を食い潰して
会社を乗っ取られただけの話である。
逆にいえば、約50年もそれだけで食っていけたのだからすごい。
読んでいくと、著者が六代目の社長になったときに、先代からの使途不明金
が巨額なので驚いた、という記述がある。
じゃあ、円谷プロの会計監査人は何をしていたのだろう?
一応、株式会社なのだから、きちんとした決算書を株主総会に提出しなけれ
ばならないはずだが、粉飾決算でもしていたのだろうか。
タイのプロダクションに著作権を譲った話も、どういう成り行きでそうなった
のかよく分からないし、おそらくヤクザが一枚噛んでいるに違いない。
表沙汰にできないアングラマネーがあったのだろう。
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ウルトラマンに対して、仮面ライダーや戦隊ものは現在でもシリーズが
製作されており、売れ行きも好調のようだ。
そもそもの著作権が石ノ森章太郎にあるから、他の関係者によるゴタゴタ
が少なかったのではないか。
あるいは、東映や玩具会社ががっちりと利権を確保していたので、石ノ森
章太郎が亡くなってからも、続々と次の企画を立てることができたのかも
しれない。
「ドラえもん」などの藤子キャラも、同じように守られていくのだろう。
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本書に、2001年に発行された「円谷英二 生誕一〇〇年」という本から
庵野秀明の文章が紹介されている。孫引きになるが引用する。
「特撮物はテレビでの空白期間が長すぎて、現状では若者に定着しづらいんじゃ
ないですかね。(中略)空白期間が十五年近くあるわけで、これはなかなか取り
返しがつかないと思います。今の三〇歳から二〇歳ぐらいまでの人は、特撮に
何の興味もないですからね。(中略)僕等の世代はアニメと特撮という共通体験
があるんですけど、今の若い人はアニメとゲームなんですね、共通言語が。
特撮をほどんど見てない、というか興味もない人がほとんどです。(中略)
そういった土壌の違いとかもあるんじゃないでしょうか」 p 124
空白期間というのは「ウルトラマン80」が終了した1981年から「ウルトラマン
ティガ」が放送された1996年までの間、地上波でウルトラシリーズのレギュ
ラー番組がなかった時期をいう。
これをふまえて「館長 庵野秀明 特撮博物館」を見ると、より深い思いが
込められていたように感じただろう。
あれは失われつつある特撮へのレクイエムだったのかもしれない。
ていうか、エヴァの映画が終わったら、庵野秀明に特撮ものを一本撮らせたら
いいのに。そういう企画をぶちあげるプロデューサーはいないの?
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初版の帯が銀色で、真ん中に赤い■があるのが粋なデザインだ。
タイトルはむしろ「円谷英二が泣いている」にした方がいいのではないか。