- 作者: 橋爪大三郎,大澤真幸,宮台真司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/02/15
- メディア: 新書
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橋爪大三郎の奥さんは中国人だということで、この鼎談の前に3人で
中国を旅行したのだそうだ。
通読して思ったのは、宮台真司は要るか? ということだった。
この本のスタイルは、大澤真幸が質問して橋爪大三郎が答える、と
いうものだが、宮台が入ることによってリズムが乱れるというか、
引っかかって面白くなくなるのである。
そこに目をつぶれば、インテリの考える中国像がよく分かる良書だった。
ただし、これが政治に反映されることはたぶんないだろうけど。
それにしても、日本は米国よりはるか昔から中国と交流があるという
のに、どうしてその国民性や政体の要点を分析できないのだろうか。
そこが不思議でならない。
中国人の考え方というのは、それほどわけがわからないものなのだろ
うか?
↓
前から思っていた、どうして中国は日本の侵略のことは批判するのに、
英国については何も言わないのだろうか、という疑問の答があったよう
な気がする。それがこの部分だ。
橋爪
あのね、香港と中国の関係を考えてみると、香港の地位は、アヘン戦争や
アロー号戦争で結ばれた屈辱的な条約により、香港島は永久に、九龍半島は
九十九年の租借でイギリスの統治権があった。
さて毛沢東は、中華人民共和国の成立後もこの香港の、イギリスの権益を
承認した。イギリスは帝国主義ですよ。植民地主義ですよ。でも中国は、
香港に指一本触れなかった。水道も、生鮮食料品も、広東省から供給した。
ライフラインをストップするのは簡単だったが、中国はそれをやらなかった。
文化大革命のときもです。
アメリカ糾弾集会は、いたるところで開かれたが、イギリス糾弾集会なんか
開かれない。イギリスはどうしたかというと、お礼に、中華人民共和国を
承認した。これは、中国の国際的地位を高めるのに役立った。中国の国連
加盟問題でも、アメリカがどんなに反対しようと、中国の肩をもち続けた。
中国に恩を売ったわけだ。これは大人の関係でしょ? その間日本は、
アメリカにくっついて毎年反対票を投じた。
漢と書いて「おとこ」と読むことがある。漢民族の漢である。
要するに、中国人は侠気のある行動には侠気をもって応える文化がある
のだろう。
近代的な考え方では、中国は碌なことをしない国家かもしれないが、
それはキリスト教文明圏の見方であって、それ以前からある文明圏なの
だから、いわゆる近代になかなか適応できないのも当然である。
こういうやっかいな隣人とうまく付き合っていくには、あまり頭に血を
昇らせない方がいいのだろう。
石原慎太郎はこの本を読んだのだろうか。