おどろきの中国

おどろきの中国 (講談社現代新書)

おどろきの中国 (講談社現代新書)

「ふしぎなキリスト教」に続く第二弾は隣国の中国。
橋爪大三郎奥さんは中国人だということで、この鼎談の前に3人で
中国を旅行したのだそうだ。


通読して思ったのは、宮台真司は要るか? ということだった。
この本のスタイルは、大澤真幸が質問して橋爪大三郎が答える、と
いうものだが、宮台が入ることによってリズムが乱れるというか、
引っかかって面白くなくなるのである。


そこに目をつぶれば、インテリの考える中国像がよく分かる良書だった。
ただし、これが政治に反映されることはたぶんないだろうけど。


それにしても、日本は米国よりはるか昔から中国と交流があるという
のに、どうしてその国民性や政体の要点を分析できないのだろうか。
そこが不思議でならない。
中国人の考え方というのは、それほどわけがわからないものなのだろ
うか? 



前から思っていた、どうして中国は日本の侵略のことは批判するのに、
英国については何も言わないのだろうか、という疑問の答があったよう
な気がする。それがこの部分だ。

橋爪


 あのね、香港と中国の関係を考えてみると、香港の地位は、アヘン戦争
アロー号戦争で結ばれた屈辱的な条約により、香港島は永久に、九龍半島
九十九年の租借でイギリスの統治権があった。


さて毛沢東は、中華人民共和国の成立後もこの香港の、イギリスの権益を
承認した。イギリスは帝国主義ですよ。植民地主義ですよ。でも中国は、
香港に指一本触れなかった。水道も、生鮮食料品も、広東省から供給した。
ライフラインをストップするのは簡単だったが、中国はそれをやらなかった。
文化大革命のときもです。


アメリカ糾弾集会は、いたるところで開かれたが、イギリス糾弾集会なんか
開かれない。イギリスはどうしたかというと、お礼に、中華人民共和国
承認した。これは、中国の国際的地位を高めるのに役立った。中国の国連
加盟問題でも、アメリカがどんなに反対しようと、中国の肩をもち続けた。
中国に恩を売ったわけだ。これは大人の関係でしょ? その間日本は、
アメリカにくっついて毎年反対票を投じた。

漢と書いて「おとこ」と読むことがある。漢民族の漢である。
要するに、中国人は侠気のある行動には侠気をもって応える文化がある
のだろう。


近代的な考え方では、中国は碌なことをしない国家かもしれないが、
それはキリスト教文明圏の見方であって、それ以前からある文明圏なの
だから、いわゆる近代になかなか適応できないのも当然である。


こういうやっかいな隣人とうまく付き合っていくには、あまり頭に血を
昇らせない方がいいのだろう。
石原慎太郎はこの本を読んだのだろうか。