素晴らしき哉、フランク・キャプラ

素晴らしき哉、フランク・キャプラ (集英社新書)

素晴らしき哉、フランク・キャプラ (集英社新書)

読みやすいフランク・キャプラの伝記だった。
映画の内容から、私はてっきりキャプラ監督はリベラルな人かと
思っていたが、共和党支持者だったとは。


冒頭に山田洋次監督の談話が掲載されており、これが良かった。

 では、その全盛時代にキャプラという映画監督はどういう位置にいたのか? 
まず、Aクラスの監督といえばジョン・フォードウィリアム・ワイラー
ビリー・ワイルダー、そしてアルフレッド・ヒッチコックといった名前が並ぶ
ことになる。この人たちからちょっと下がったAダッシュの監督ということに
なるのですね、キャプラという人は。


 だから「おれ、キャプラが好きだ」ってあまり大声で言えないというところ
があった。(中略)それらの巨匠たちに比べるとキャプラ映画は一つ個性が
弱い、あるいは存在感が希薄だといえるような気がする。


 にもかかわらずキャプラの映画の楽しさっていうのは独特のものがあって、
「おれはキャプラが好きだ」と大声で言えないところも含めて、キャプラの
特徴であったりするのです。つまりキャプラ作品は、大衆受けし、誰が見ても
面白い、典型的なアメリカ映画であるという点が、「通俗的だ」と言われる
理由だった。

(p10-11)


そうなのだ。
どういうわけか、フランク・キャプラが好きだ、というのは言いづらい
のである。
だが、今のような時代にこそ、キャプラ映画はもっと広く鑑賞される
べきではないかと思う。


その入門書として、本書は最適だろう。
もう著作権が切れているので、キャプラ映画は非常に安く手に入れられ
る。白黒映画なんか……と誤解している若い人にこそ見てほしい。