NHKで、宇多田ヒカルの音楽活動休止前のインタビューとコンサート
のドキュメントがあったので見た。
私は宇多田ヒカルのファンではなかったけれど、デビューしてからの
数年の活躍は、すごい子が出てきたなぁ、と感心していた。
いい曲を書くなぁ、とも思っていた。
彼女は20代で、お金も名声もすべて手に入れていた。
コロンビア大学にも合格したし、CMディレクターと結婚して離婚も
経験した。
これで子供を産んでいたらパーフェクトだったろう。
しかし、インタビューでは、普通の人ができることをやれるようにな
りたい、と語っていた。
まわりの人が全部お膳立てしてくれる環境にいると、何もできない人
になってしまう。それが嫌だから、勉強したりボランティア活動をし
たい、という。
もし、売れるのに苦労した人なら、こうも易々と今の地位を手放さな
いだろう。
私が勝手に想像するに、彼女は権力に嫌悪感があったのではないか。
20代の感覚としては、ごく真っ当なものだ。
リムジンの後部座席から何もかもを指図するような“アーティスト”に
なりたくなかったのだと思う。
また、音楽がパワーを持っていた時代が過ぎてしまったことも、彼女
に決断させた一因だろう。
たくさんCDを売ることが最優先の世界はいつか破綻する。
クレバーな彼女は、そうなる前に脱出したかったのではないか。
何年かしたら、きっとカムバックしてくるだろうけど、そのとき我々
は宇多田ヒカルを暖かく迎え入れることができるだろうか。
(NHKは、紅白に出演してもらいたくてこの番組を作ったような気がするが)
願わくば、変な宗教に入れこんだり、おかしな男に引っかかったりし
ないでほしい。