街場のマンガ論

街場のマンガ論 (小学館クリエイティブ単行本)

街場のマンガ論 (小学館クリエイティブ単行本)

わりと散漫な感じだが、そのぶん気軽に読めた。
いつものウチダ節なので楽しい。


この中に「SFから『オタク』へ」という04年6月に書かれたものがあって、
オタクという人々が登場する前段階としてSFファンというものがいた、と
いう話がある。


これはそのとおりで、「オタク」の前史について語る人がほとんどいない
ので、備忘のためにここに記す、と書いてある。
現在では、最相葉月のこの本で詳しく記されているので安心されたい。

星新一〈上〉―一〇〇一話をつくった人 (新潮文庫)

星新一〈上〉―一〇〇一話をつくった人 (新潮文庫)


ひとつ「ん?」と思ったのは、「ボーイズラブとエロス」という題で、な
ぜ少女たちは男同士の同性愛を好むか、という話だ。
それはエロスの形態として際立って非功利的なものだからだ、という。


だから
1.種の存続に関与しない
2.愛に関与しない
3.市場価値に関与しない
4.総じて、人間的諸価値(共同体原理、倫理、品格、美、コミュニケーション
 など)に関与しない
ものがエロス純度が高い、らしい。


つまり
1.同性が
2.愛のない
3.無料の
4.ド変態行為
をするのが最もエロい、という理屈になり、だから少女たちはボーイズラブ
ものを好む、という。


私が思うに、もっと単純に、人間の関係性が好きだから、という理由でもい
いのではなかろうか。
A×Bで無限の攻めと受けをあれこれ想像するだけで楽しい、というのがボ
ーイズラブの基本ではないかと。詳しくないから知らないけど。


あるいは、女にはない男の友情をいろんなシチュエーションで楽しみたい、と
いう動機もあるような気がするし、ウチダ先生の話は論点が途中で変わってい
るように読めた。


なお、この本には「非実在有害図書について」という文章が別紙で差し込ま
れている。
東京都議会が条例にしようとしているマンガの規制をバッサリ斬っている
ので、興味のある方はぜひご一読いただきたい。痛快である。