パラグアイのトイレ

W杯で対戦するパラグアイに一度だけ行ったことがある。
1994年のことだ。


ブラジルにイグアスの滝という名所があって、そこを観光したついでに
訪れた。イグアスの滝は、ブラジル・アルゼンチン・パラグアイの国境
になっているのである。


案内してくれた日系ブラジル人によると、パラグアイは物価が安く買い
物天国なのだそうだ。
私たちはパスポートを片手に、国境にかかる橋を歩いて渡り入国した。
埃っぽい道路を、中型のトラックが何台も通り過ぎていた。


街中はごちゃごちゃしていて、店に入ると中国製の品物であふれていた。
確かに安いものが多かったが、品質に問題がありそうなものばかり。
レストランに入って食事をしたが、もう何を食べたのか憶えていない。


当時はブラジルと同様にインフレがすごくて、おつりは小銭ではなくガ
ムだった。小銭は翌月には無価値になるが、ガムなら大丈夫、というこ
とらしい。


私が一番驚いたのは、レストランで入ったトイレだった。
椎名誠旅行記に「ロシアにおけるニタリノフの便座」というものがあ
り、ものすごく汚いトイレの話が書いてあったが、パラグアイのトイレ
でそれを思い出した。


まず、便座がほとんど壊れているので、まともに座れない。
しかも壁や床も汚れ放題である。飲食店でこれはまずいだろう、と思っ
たのだが、他も同様なのだろう。


一番びっくりしたのは、トイレットペーパーである。
下水事情が悪いのか紙質のせいなのか分からないが、使用後は水に流し
てはいけないのだ。


ではどうするかというと、便器の横にある巨大なくずかごに捨てる。
つまり、横には他人がケツをふいたトイレットペーパーが山となって
堆積しておるのだ。みんな平気なのが不思議だった。


結局、私がパラグアイについて記憶しているのは、このトイレのこと
だけだ。
国境の街を数時間うろちょろした印象だけで語るのはフェアではない
が、まあ貧しい国だなぁ、と思うのは間違っていないだろう。


今夜の日本チームの検討を祈る。