ツィス

ツィス 広瀬正・小説全集・2 (広瀬正・小説全集) (集英社文庫)

ツィス 広瀬正・小説全集・2 (広瀬正・小説全集) (集英社文庫)

ここ一カ月ばかり、広瀬正の小説を読んでいた。


復刻された文庫本を全部読んだなかで、やはり一番の傑作は
「マイナス・ゼロ」だと思ったが、この「ツィス」もなかなかの
佳作ではなかろうか。
(ただ、あの終わらせ方は納得いかないけど)


正体不明の騒音によって東京の人が強制的に疎開させられ、
ほとんどもぬけの殻になる。


警備や報道のために聾唖者が残るのだが、その中にカーマニ
アの青年がおり、首都高速をガールフレンドを乗せてT型フ
ォードで走る、という場面がある。
これが作者の一番やりたかったことなのではないか、と思う。


つまり、プロのモデラーでもあった広瀬正が、箱庭のような
東京を自由に走り回ってみたい、という妄想が、この作品の
原動力になっているような気がする。


プロットが、耳障りな音がどんどん大きくなっていく、とい
うものだけに、映像化は難しいと思うけれど、ぜひ映画で見
てみたい。


とくに、オイネというモデルの女の子のキャラクターが秀逸
で、いま演じるならスザンヌかなぁ、と思う。