『こころ』は本当に名作か

『こころ』は本当に名作か―正直者の名作案内 (新潮新書)

『こころ』は本当に名作か―正直者の名作案内 (新潮新書)

私は「こころ」はけっこう面白いと思ったので、そんなにケチをつけなく
ともいいじゃないか、という気がするのだが、要するに文学は本人の好み
の問題である、ということなのだからしかたがない。


それに、私は古典文学をほんの少ししか読んでいないので、反論する資格
などないのである。
やはりたくさん本を読んでいる人は、それなりに偉いと思っているし。


この本を読んで思い出したのは、森高千里の「臭いものにはフタをしろ!」
という歌である。


森高千里がこの歌詞を書くきっかけになったのは、ローリングストーン
の来日公演に行ったことだった。


ローリングストーンズは1973年に来日する予定だったのだが、メンバーに
麻薬所持歴があるために入国できず、コンサートは中止されたいきさつが
あった。


1990年になって、役所も目をつぶったのか、晴れて日本でライブツアーを
行うことができ、往年のストーンファンはホンモノを見て歓喜した。


だが、森高はそのライブの最中に居眠りをしてしまったのだ。
おそらく彼女はローリングストーンズのCDをほとんど持っておらず、誰か
に連れて行ってもらっただけだったのだろう。


このことを正直に告白すると、音楽評論家か誰かに「ストーンズのライブ
で居眠りをするなんて信じられない」と酷評されたという。


森高としては、ストーンズがなんぼのもんじゃ、という話である。
ロックンロールの伝説だか何だか知らんが、退屈なもんは退屈だったんだ、
という怒りを込めて、「臭いものにはフタをしろ!」を作詞したのだ。


この態度は極めて正しい。
むしろ、彼女の方がロックなのではないかとすら思う。
どんなに有名なものでも、自分にとって退屈であれば、それは名作とはい
えない、ということだ。


それでは聴いていただきましょう。
森高千里「臭いものにはフタをしろ!!」