グラン・トリノ

グラン・トリノ [DVD]

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私の友だちは、米国には巨匠が生まれない、と言った。
しかし、クリント・イーストウッドは間違いなく巨匠になったのではないか。
(ちなみに、私はジョン・フォードマイルス・デイヴィスも巨匠に
数えていいのではないかと思っている)


しみじみとした味わい深い作品で、「ミスティック・リバー」のような、イガ
ラっぽい後味がない。
若いときなら、抑制された怒りを爆発させる演出をしたのだろうが、この映画
ではそうなっていない。


かといって、枯れた老人になっているわけでもない。
むしろ、常に怒りをあらわにしているお爺さんを演じている。
自分がどのくらい年をとっているのか熟知している撮り方だと思う。


私はアメ車に全く詳しくないので、グラン・トリノというフォードの自動車が、
歴史的にどのような位置づけなのかは分からない。
けれど、素人から見ても格好いいクルマだと思う。


なぜ米国はこのようなクルマを作らなくなってしまったのか。
あるいは、作っても売れなくなってしまったのか。
アメ車の全盛期を知っている人のイラつきも感じ取れる。


ただ、イーストウッドは、どうしようもない若者もいるけれど、ちゃんとした
若者もいる、と未来に希望を持っているようだ。
なんでモン族という少数民族を映画に採りあげたのかは分からないが、きちん
とした若者には、きちんとしたことを継承させたいという思いが伝わる。


ところで、イーストウッド自身はクリスチャンなのだろうか? あまり信仰心
を持っていないような気もするのだが、この作品では自己をキリストに投影さ
せているようなところもあり、ちょっと気になった。