禁煙ファシズム

塾で春期講習というものをする。春休みの間、小学生ならば国語と算数、
中学生なら英語と数学を教える。


この4月から小学6年生になる子たちに国語を教えたのだが、その教材に
おかしな文章を見つけた。
明らかに科学的におかしいのである。


渡辺文学という人の「タバコの害とたたかって」というものから引用し
てあるらしいが、渡辺文学って誰なんだろう? 
ググるWikipedia にあった。とにかくタバコが憎い人らしい。


読んでみると、子供向けのテキストとしては変なのである。
長くなるが教材に掲載されているものを引用する。

 タバコは史上最大の発ガン商品といわれています。それはタバコの煙の
なかに発ガン物質(イニシエーター)と、発ガン促進物質(プロモーター)
が多数含まれており、喫煙する度に身体の中にガン細胞を育てているから
です。特に喉頭ガンは肺ガンは、非常に高い死亡率であり、タバコ病の大
きなウエイトを占めています。


 俳優の松田優作氏が膀胱ガンで39歳で、作家の開高健氏は食道ガンで57
歳で、森瑤子氏は胃ガンで52歳でその他多数の俳優や歌手、作曲家、作家、
評論家などが早死にしていますが、これらの方々もタバコが最大の原因で
した。心臓病、脳卒中、胃ガン、大腸ガンなど、喫煙は多くの病気と密接
な関係があるのです。


 動物実験で、犬やうさぎ、マウスにタバコの煙を吸わせると、ガン細胞
ができることも分かっています。一本のタバコに含まれる発ガン物質はわ
ずかでも、本数が増え喫煙年数が長くなれば、その威力は加速度をつけて
増大するのです。


 長期間の喫煙が極めて危険なのはもちろんですが、さらに問題なのは、
若い時からの喫煙です。人の身体が成熟するのは、20歳ごろまでとされて
おり、それまでは発育途中の未完成な身体で、細胞はまだ弱く、他からの
影響を受けやすいので、タバコの煙の毒性物質も侵入しやすく、ガンの芽
を早くから育ててしまうのです。


 平山博士は「その一服、一服ごとに、ガン育つ」と、喫煙の危険性を指
摘していました。


 さて、一日あたり平均喫煙本数と喫煙の年数を掛けた数を「ブリンクマン
指数」と言います。例えばタバコを毎日20本、20年間吸った場合は、ブリ
ンクマン指数は「400」であり、わが国で現在肺ガン検診を受ける際の目標
値となっています。


 喫煙本数と年数が多くなれば、ブリンクマン指数も500、600、700と増えて
ゆき、ガンの危険性は加速されていくのです。


 長年タバコを吸っていた人でも、禁煙すればその日からブリンクマン指数
と手を切るわけであり、どんどん肺ガンその他の病気の危険性は減っていき
ます。


 そして、タバコをやめて10年以上経てば、危険性は非喫煙者とほとんど変
わらなくなります。大人のスモーカーの中には、「いまさらやめても‥‥」
などと言う人がいますが、とんでもないことで、禁煙するには遅すぎるとい
うことはありません。


 喫煙者は、タバコをやめた瞬間から家族や周りの人々に対して、公害の加
害者という立場を捨てることになるのです。


 禁煙は本人だけでなく、家族、職場の同僚、友人など皆に喜ばれる健康法
で、お金の節約にもなるのですから、こんなにすばらしいことはないと思う
のですが。


突っ込みどころ満載の文章だ。
しかし、これを読まされた小学6年生はどう思うだろうか。
国語の問題のためのテキストとはいえ、こうしたトンデモ内容の文で、知ら
ず知らず洗脳されてしまうのではなかろうか。


もちろん、未成熟な子供がタバコを吸うのはいけないとは思う。
しかし、こうして禁煙ファシズムは広がっていくのかと思うと、ちょっと怖
くなる。


誰がこの教材を編集したのかは分からないが、ひどい偏見を持っていること
だけは間違いない。