挨拶

ときどき、集団下校している小学生が、見知らぬ私に対して「こんにちはー」
と挨拶してくれることがある。
知らない人にも元気よく挨拶しよう、という教えを素直に実行しているのだ
ろう。


これはいいことかもしれないが、日本人は昔から挨拶をしていたのだろうか? 
たしかに落語を聴いていると、「こんちはー」などと言っている。
もっとも、明治時代にできたものかもしれないし、現代風にアレンジしている
こともある。
江戸時代以前、普通の人が今のように挨拶をしていたかどうかは疑問だ。


私は、見知らぬ人に挨拶するのが苦手である。
商売ならばまだ何とかできるが、なんでもないときに自分から声をかけるなん
てできない。


欧米人は気軽に挨拶をしているようだが、これは文化の違いだろう。
会釈とか目礼というものがあるのだから、わざわざ声に出す必要があるのかど
うか。何でも欧米の真似をすればいいというものではない。


きちんとした挨拶ができれば一人前の社会人だ、ということには私も同意する
けれど、無理にさわやかにすることはなかろう。
芸能人じゃあるまいし、誰にでも愛嬌をふりまくわけにもいくまい。


そういえば、小谷野敦が何かで書いていたが、芸能人が夜でも「おはようござ
います」と挨拶するのは、おはようございます以外に敬語表現がないからだそ
うだ。なるほど。