映画解説

水野晴郎が亡くなった。
私が記憶しているメジャーな映画解説者で生存しているのは、高島忠夫だけになって
しまった。あ、おすぎがいるか。


かつてテレビで外国映画を放送するとき、映画解説というものがあった。
冒頭にどのような作品かを紹介して、終わると解説者の感想や見所などを語る。
いま思うと、なかなか啓蒙的なことをしていた。


最近はそのようなことをせず、ナレーターがその役割を代行しているようだ。
それに、レンタルDVDが普及し、ネットでいくらでも映画について調べることができる
のだから、解説者は要らなくなったのかもしれない。


しかし、山ほど映画を見てきた人が語る「何か」は、ネット上にはないのではなかろう
か、とも思う。
なんというか、歴史的に映画を見てきた人が伝えられるものが、もはや失われてしまっ
たのではないかと。


今の若い人でも、何千本も映画を見ている人はいるだろう。
しかし、それは時系列で見てきたものではなく、データとして知識を収集しているよう
な気がする。
その知識には深みがない、というのは言いすぎかもしれないが、ほかの人に代替可能な
ものにすぎないと思う。


私たちは、最近の映画も過去の名作も、フラットな状態で鑑賞することができるけれど、
映画好きな人みんなが認める価値というものを共有できないのではないか。
そういう寂しさを感じてしまった。