相棒

1000円の日だったので見てきた。
週刊文春小林信彦のコラムでも褒めていたし、ちょっと気になっていたのだ。
公開して1ヵ月経つし、もうネタバレしてもいいとは思うが、一応たたんでおきます。




面白かったといえば面白かったけれど、ひとに薦めるようなものではなかった。
私はテレビ版を見ていないからかもしれないが、独立した作品としても、ちぐはぐな
印象がある。


事件はテレビ番組のキャスターが殺害され、鉄塔に吊り下げられて発見されるところ
から始まる。
現場にはアルファベットと数字の奇妙な暗号が残されていた。


次に、衆議院議員が狙われ、警備をしていた主人公たちは間一髪で助かる。
このときにも、現場に赤いスプレーで暗号が書かれていた。


さらに、全く関係ない殺人事件として処理されていた現場の写真にも同様の暗号が写
っており、水谷豊だけが、それがチェスの棋譜であることに気がつく。


ここから犯人と水谷豊との息詰まる攻防が始まり、ドラマは盛り上がっていく。
ラソンのコースとチェスの盤面を重ね合わせたりするところは面白かった。


実行犯は映画が始まって30分ぐらいで明らかにされており、彼が犯行に至った動機も
描かれていく。
そのとき物語を運ぶツール(いわゆるマクガフィンというやつですね)に、外務省が
機密扱いしている“Sファイル”というものが出てくる。


この機密情報と連続殺人のつながりが、どうにもしっくりこないのですな。
実行犯を指図していた真犯人は、Sファイルを世間に知らせるために事件を起こした、
という設定だが、わざわざチェスを利用した殺人事件を実行しなくても、ほかに穏便
なやり方があったのではないかと。


言論が統制されているならともかく、機密ファイルの存在を顕にすることは、人を殺
さなくてもできるのではないか。
それこそインターネットというものがあるわけだし、処刑リストを作るよりよほど建
設的だと思うのだが。


あと、気になったのは本仮屋ユイカが演じるキャラクターである。
終盤で、彼女が実行犯の柏原崇が現れる場所の情報を、公衆電話で水谷豊に伝
える場面がある。
そんな重要なことはもっと早く言え、と誰しも突っ込んだのではなかろうか。


それに、水谷豊が柏原崇を発見したとき、なぜか青酸を飲んで死にかけている。
自殺する理由は何だったんだろうか。ちゃんと描いてほしかった。


脚本を書いたのは戸田山雅司という人だ。
映画では「UDON」と「7月7日、晴れ」も書いているが、どちらも残念な出来だった。
テレビドラマでは「ロッカーのハナコさん」が、まあ面白かったけど。


同じ警察ものなら、「パトレイバー」の映画版の方が「相棒」より数段上なんじゃない
かな、と思いました。