格闘する者に○

格闘する者に○ (新潮文庫)

格闘する者に○ (新潮文庫)

友だちが貸してくれたので読んでみた。
うまい小説だと思う。
なんたって、後に直木賞をとる人のデビュー作だし。


ただ、私はこの小説の主人公の女子大生を、本当に嫌な女だと思う。
ついでにいうと、主人公の弟も嫌な奴だ。
こういうキャラクターを造形できる作者は、さぞかし(以下略)


これは就職活動をする女子大生の物語だが、加えて政治家の父親の後継者問題や
谷崎潤一郎を思わせる脚フェチの爺さんとの恋愛が描かれており、読者を飽きさ
せない。


主人公はマンガが好きだからマンガの編集者になろう、と大手出版社を受ける。
私も同じ動機で大手出版社を受けて、ことごとく落とされたので、他人ごととは
思えぬものがある。


面接で受けた屈辱や、わけのわからない作文、トリビアルな雑学のテストなどな
ど、懐かしいといえば懐かしい。
K談社と集A社の社風の違いなどは、面接に行った者でしか描けないリアルさが
あった。


私は主人公の言うところの「産業革命時代のイギリスの炭鉱みたいな労働条件の
編集プロダクション」になんとか入ることができ、数年ほどマンガの編集をさせ
てもらった。
そこでの日々は、いまも財産になっていると思う。


結局のところ、仕事を何年かやっている人間からすれば、就職活動のあれこれは
不愉快きわまりないものであるにしても、通過儀礼のひとつなんだろうな、と思
う。


それは、どういう理由で合否が決まるのかが全く分からない、という理不尽さに
直面することで、就職後に日常的にある理不尽さを事前に学ぶことができる、と
いう意味においてだが。


そういえば、大ヒット作の担当だった有能なマンガ編集者に女性がほとんどいな
いのは、もともとマンガ編集者には男しかいないからなのか、それとも別な理由
なのか、よく分からない。
それに、今ではたくさんの優秀な女性マンガ編集者が業界にあふれているかもし
れないが、私には知る由もない。


この小説の主人公がマンガ編集者になったら、どんなひどいことをマンガ家に言
うだろうか。
続編があったら読んでみたいものだ。