日本売春史

日本売春史―遊行女婦からソープランドまで (新潮選書)

日本売春史―遊行女婦からソープランドまで (新潮選書)

年末に何を読んでるんだ、と思われるかもしれないが、そういうタイミングだっただけで、
単なる偶然である。


この本は、表題にもあるとおり、日本の売春の通史である。
まえがきによると、歴史学民俗学は専門化が著しいために、一つの現象を概観したもの
はなかなかないらしい。
だったら自分で書いてしまえ、というのが執筆の動機のようだ。


本を読んで考えるのが学者の仕事とはいえ、本当にたくさんの本を読んでいるなぁ、と感
心する。
しかし、このような学者の仕事が、普通の人のもとになかなか届かないところが辛いとこ
ろだろう。


本書にある、中世から近世にかけての遊女についての文献を考察したものは、なるほどそ
うですか、としか言えない。素人なので、何の知識もないから、きっとそうなんだろうな、
と思うだけである。


私が唯一ツッコミを入れられるのは、現代の風俗について書かれている部分だ。
186ページに

 吉原ソープランド街が、どの駅からも遠い場所にあるように、ソープランドの多くは一般
人が普通に生活していても気づかない場所に存在する。東京では、吉祥寺のソープランドが、
珍しく、駅から看板が見える位置にある。

とあり、確かに中央線に乗って南側の方を見ていると、吉祥寺駅近くに「ソープランド」と
いう看板が見える。


だが、あそこは「ソープランド」という名前であるものの、中味はファッションヘルスであ
る。実際に行ったことがあるから間違いない。
ただ、行ったのは20年近く前だから、今はどうなっているのかは知らない。


私は20代のとき、風俗が大好きだった時期があり、ピンサロからソープまでいろいろ試して
みた。
しかし、金で女を買っているというのは、当たり前だが虚しいものである。


別に恋愛を伴うセックスが至高のものだとは思わないけれど、風俗産業には情というものが
薄いので、味気なくなるのも事実だ。
その点、江戸時代の方が、まだ情があったのではないかと思う。


なので、ある時点からぱったりと風俗には行かなくなったのだが、別に高尚な人間になった
わけではなく、単にお金がもったいないと思ったからである。


売春は、酒やタバコと同じように、悪い面もあるが気持ちよくなる面もあり、禁止してもど
こかで隠れてやるものだ。
だったら、きちんと管理してやった方がいいのではないかと思うが、そのあたりは曖昧なま
まにしておくのがベストなのかもしれない。


ただ、禁煙運動のように、悪い面だけをヒステリックに糾弾する人もおり、売春もいずれは
そういう立場で批判され、非合法化される可能性はある。
私は、児童買春は絶対にいかんと思うが、成人の売春はある程度認めなければならないと思
う。


それに、いまの素人女と売春婦の何が違うのか、厳密に言えばグレーゾーンにいる素人女の
方が多い、とさえ言えるのではなかろうか。
私は女を信用できないので、そう思っているだけかもしれないが。