中国のチベット自治区に鉄道が通ってから、観光客が大勢訪れているという。
そこのホテルの社長と従業員を中心にした内容で、見ていると居たたまれないものがあった。
米国がハワイにしたようなことを、中国がチベットでやっている、という構図だろうか。
チベットのホテルの社長は、教養がまるっきり欠如した男で、とにかく金儲けしか頭にない。
その貧相な顔を見ていると、たぶんホテルのサービスも大したことはないだろうな、と思う。
ときどきチベットの集落に行っては、民芸品や骨董品を二束三文で買い叩いてくる。
それを原価の何倍もの値段で売る。本当に目利きかどうかは怪しい。
一方、チベット人の従業員は、北京語を満足に話せない若者である。
ホテルで民族音楽を演奏するショーをやって働いているが、いいように搾取されるだけだ。
成果主義で給料を減らされて、最後には辞めてしまう。
こういうのは、資本主義が流れ込んだ場所でよく見られる光景だ。
観光という娯楽は、実はずいぶん失礼な行為ではないかとさえ思える。
そこに暮らしている人を面白がって見るわけだから、逆の立場になれば、なんか小馬鹿にされ
たような気になるだろう。
それでも、貨幣経済に取り込まれてしまったら、馬鹿にされながらも働かねばならない。
どうも私は納得いかないのだが、生まれる前からそう決まっているので逆らうこともできない。
敢えて逆らっているのがニートか。
ともかく、観光客が押し寄せてくると、チベットも俗化してくるだろう。
宗教で支えられてきたものが壊れてきて、若者は物質文明に憧れるかもしれない。
そうなると中国中央政府の思う壺であろう。
いま、チベットにどのくらいテレビが普及しているか知らないが、私が中国官僚なら、チベット
に中国中央電視台が受信できるテレビを無料で配るだろう。
私が思いつくぐらいだから、何十年も前にとっくにやっていると思うけど。
それとも、チベット仏教はそんなものを跳ね返すパワーを持っているのだろうか。
武装蜂起しようにも、鉄道があるから人民解放軍はいくらでもやってくる。
ダライラマ14世は政治的立場から引退するようだが、次のダライラマが誕生するころには、チベ
ットがどうなっているか、さすがに予想できないと思う。
金儲けというのは、誰かが酷い目に遭わなければできないものだ、と思ったNHKスペシャルでし
た。