女の哲学者が少ないのは事実だが、それは女の頭が悪いということを意味しない。
哲学者は、ふだんは何の役にも立たない人である。
女は最近までそんな風に生きることを許されなかった。
もうひとつの理由は、基本的に抽象的なことを考える必要がなかったからだと思う。
人はどこから来てどこへ行くのか、なんてことを考える暇はなく、食事の支度とか洗濯とか
子育てとか、目の前の具体的なことを次々と処理しなければ生活できなかったはずだ。
そういう思考の癖がついているから、ときどき
『ねえ、私のこと、どのくらい愛してるの?』
と言う女がいる(らしい。私は言われたことないけど)。
愛情に、どのくらいとか計量する単位はない。
いわば、抽象的なものを具体的なものに変換させようとしているのである。
で、その具体的なものというのは、バッグだったり時計だったり毛皮だったりするわけだ。
そんなことを言う女は、キャバクラ嬢か! と罵られてもしかたあるまい。
普通の女でも、さすがに毛皮とかは要求しないだろうけど、旅行に連れてけとかアイス買っ
てきてとか、やはり具体的なものを欲しがるのである。
モテる男は、そういう欲求を早めに察知して、マメに満たしてあげることでセックスに持ち
込むテクニックがあるのだろう。
それが面倒くさい人は、最初からモテることなど目指さないほうが楽だと思う。
逆に、女が男にモテたい場合は、男の抽象的な願望を満たしてやればよろしい。
漠然とした夢を語っていたり、オタクの心意気を説いたりしている男を見て
『なに言ってんだコイツ。バッカじゃねーの?』
と思っていたとしても決して表には出さず、すごいねー、とか、素敵、とか褒めてあげること。
男はそういうプライスレスなものに弱いのです。
てことは、もし女が経済活動の実権を握っていたとしたら、貨幣などという抽象的なものは
発達せず、ずっと物々交換で世の中が動いていたかもしれない。
そうすると、お金でお金を増やす金融業などという抽象的な産業は生まれず、世界は今より
もっとのんびりしていたかも。
ただし、具体的なモノを手に入れるために、男の世界はマッチョな段階にとどまっていた可
能性はあるな。
のんびりどころか、北斗の拳みたいな世界になっていたりして。
私なんか真っ先に死ぬな。