タイアップの歌謡史

タイアップの歌謡史 (新書y)

タイアップの歌謡史 (新書y)

戦前から現代までのタイアップソングの歴史を、非常にテンポよく書いてあり、読んでいて
面白かった。
ただ、最後に参考文献の一覧表が欲しかったかな。


この本によると、なんだか日本の歌謡曲電通が仕切っているようにも思えるが、その
あたりの事情はもっと複雑なのだろう。


《第七章 イメージソングと『ザ・ベストテン』の八〇年代》という章からは、私にとって
もリアルタイムなので、記載されているCM曲を見るとすぐにメロディが頭に浮かぶ。
それほど刷り込まれているということだろう。


そういえば、今と違って80年代の化粧品のCMにはアイドルの曲が多く使われていたっけ。 
2000年以降だと、松浦亜弥がシャンプーのCMで「桃色の片思い」とか「ね〜え」なんかを
唄っていたはずだが、それ以外はあまり記憶にない。


《第八章 TVドラマとタイアップソングの時代》も、ぐいぐい読めた。
当時はドラマの主題歌が100万枚から200万枚も売れていたのだ。信じられない現象である。
主なタイアップ曲が記載されているのだが、正直サビのメロディは浮かんでも、ドラマの内容
はちっとも思い出せなかった。
盛り上がる場面で、必ずタイアップ曲が流れていたなぁ、という印象しかない。
(今日、終了したドラマでもタイアップ曲(?)がかかっていたが、シングルで出ているのだろ
うか?)


いまやドラマはおろか、アニメの主題歌もタイアップソングになってしまった。
私のようなオッサン世代は、「ゲッターロボ」の主題歌なんか最高に格好いいのだが、今だと
ダサく聴こえるのかもしれない。


この本では《第十一章 ポスト・タイアップ時代》で、CDの売れ行きが低迷している原因を
携帯電話の普及で、そちらにお金をまわされたこと、違法コピーの急増、少子化などに求めて
いる。
その他の要因としては、従来のタイアップ商法が飽きられてきたからではないか、ともある。


だが

 いま、マス・マーケティングに代わって注目されているのは、顧客とのコミュニケーション
を重視した関係性マーケティングだ。音楽産業に当てはめて考えれば、ファンとのコミュニケ
ーションを重視したジャニーズ事務所の戦略はまさにこの関係性マーケティングの手法といえ
る。2006年の唯一のミリオンセラーシングルとなった『Real Face』を歌ったジャニーズ事務
所のアーティストKAT−TUNは、デビュー前にすでに100を超える公演を行っている。こ
のファンとのコミュニケーション重視の戦略がCDの売り上げにつながったのである。

とあるのは、私としては納得できない。


なぜなら、モーニング娘。だって同様にコンサートを行っており、ファンとのコミュニケー
ションを重視しているが、ミリオンセラーにはほど遠い。
CDを買うのはそのファンだけだからだ。


大ヒットするためには、コアなファン以外の人がCDを買う必要があり、KAT−TUNの場合
は、焦らしに焦らしてからシングルを出したため、ファン以外の人も興味を持っただけのこと
だ。その証拠に、それ以降の彼らのシングルはミリオンセラーになってはいないはずだ。


また

宇多田の少し後にシーンに躍り出てきた浜崎あゆみの場合も、一度グラビアアイドルを引退し
たところをプロデューサーのMAX松浦に拾われて歌手として再起するという、目を引く“プロ
フィール”を持っていた。浜崎あゆみもまた“華麗なプロフィール系”なのだ

という部分もどうだろうか。


重箱の隅を突くようで申し訳ないが、浜崎あゆみがブレイクしたのは、女子高生に歌詞が受け
たからであり、別に彼女の過去のプロフィールがあったからではない。
宇多田ヒカルとは違うのである。


現在、確かにシングルCDの売り上げは低迷しているが、携帯ツールへのダウンロードは増え
ている、と本書にはある。なるほど。
おそらく、チャートを作る指標が入れ替わる過渡期なのだろう。
日経平均を出す指標も時代ごとに入れ替えるように、音楽の売り上げチャートもダウンロード
数を加えるべきだと思う。


こんどモーニング娘。に中国人が2人加入するが、これは北京オリンピックでのタイアップを
取るための布石だろうか? 
どうもテレビ局つながりの音楽出版社が握っている利権は、つつけば膿がドロドロ出てきそう
で怖い。


本文と写真はまったく関係ありません

( ´ Д `)<ラブマの原盤権は吉本音楽出版が持っているぽ