プロモーションビデオの現在

私は80年代後期に流行した MTV 世代だ。
マドンナやデュランデュラン、あるいは「スリラー」以降のマイケル・ジャクソンは、プロモー
ションビデオなしでは成功しなかったミュージシャンだが、彼らの映像を楽しみにしていたのが
MTV 世代といえる。


日本でも萩原健太が司会をした「MTV JAPAN」という番組が深夜にあって、いろんな曲をエアチェ
クしたものである。同じ時期に小林克也の「ベストヒットUSA」という番組もあり、米国のヒット
チャートが毎週紹介されていた。


ところが、90年代に入るとこのようなプロモーションビデオを紹介する番組がパタッと終了して
しまった。理由はよくわからない。
MTV でブレイクしたミュージシャンに対する反動があったのかもしれない。
それに対する MTV 側の対策が、アンプラグドと呼ばれるアコースティック楽器を使ったライブ
ショーだったが、人気ミュージシャンが一巡して終わった気がする。


現在、米国では「MTV2」というチャンネルで音楽ビデオを放送しているようだ。
本来あったチャンネルでは、ドラマとかリアリティ番組なんかをやっているらしい。
プロモーションビデオがポップカルチャーに影響を与える時代は10年以上前に終わってしまった
ということか。


一方、土曜日の夜中にやっているTBSの「CDTV」という番組では、日本の音楽をチャート形式で
紹介しており、ほとんどはプロモーションビデオの一部を放送している。
ということは、当たり前だが、今でもプロモーションビデオはどんどん作られており、CS 放送や
ケーブルテレビで流されているわけだ。


すると、地上波や BS 放送を見ている人は、プロモーションビデオをほとんど見られないという
ことになる。今のところ、CS 放送を見られる人の方が少ないので、文字通りのプロモーション
(販売促進)になってないのではないか、と思う。
恐らく、地上波ではスポット CM の方がいいのだろう。


しかし、例えば浜崎あゆみ宇多田ヒカルのプロモーションビデオは、かなりお金がかけられて
いるはずだ。
後で DVD を販売してモトを取るつもりだろうけど、ファンのためだけに作られているとすれば、
もったいないような気がするし、ビデオを見て新しいファンが獲得できるかどうかも疑問だ。


大きな物語が崩壊した”説が正しいとすれば、ポップミュージックの世界でも、ロックンロー
ルの神話や MTV の虚構が崩れ去り、それぞれのミュージシャンごとの小さな物語をファンが共
有する、という形になっていったのかもしれない。


最近では YouTube によって誰でも面白ビデオを発表できるようになったので、高額な予算で作っ
た作品も、アイデア一発勝負の作品と同じ地平で勝負される。
で、ますますミュージシャンのプロモーションビデオが、コレクターズアイテム化していくよう
な気がする。


結局、私たちは便利なツールを手に入れたけれど、タコツボに入ったまま出てこられないような
世界にいるのかもしれない。(←ちょっと社会派な結論w)


本文と写真はまったく関係ありません

( ^▽^)<常に全力でプロモーションしてますが何か?