- 作者: 瑛太
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2006/02/24
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このほどようやく見ることができた。
「サマータイムマシーン・ブルース2005」の福岡公演である。
この芝居は本広克行によって映画化されているが、それは見てない。
演劇の方はわりと面白かったので、レンタルしてみようかな。
BS2の放送では、劇団主宰の上田誠への30分のインタビューがあった。
演劇人には(たぶん)珍しい理系の人である。
自分で解説をしていたので、どういう意図で脚本を書いたかがよく分かった。
「サマータイムマシーン・ブルース」は、タイムパラドックスをテーマにした3幕もので、主人公
は大学のSF研究会の仲間たちである。
暑い夏の日に、コーラをこぼしてクーラーのリモコンを壊してしまい、部室でダラダラしていると、
部屋の片隅にいつの間にかタイムマシーンが置いてあり、それを使って過去からクーラーの壊れて
ないリモコンを持ってこようとする。
ところが、過去を変化させると現在に影響を与えることを知り、やはり何も触れないようにしよう
とドタバタしているとき、25年後の未来からやってきた大学生が現れ、さらに混乱する。
昨日と今日を往復しているうちに、いろんな伏線がぴたりぴたりとはまっていき、最後は丸く収まる
というストーリーだ。
脚本を書いた上田は、「定点観測型のタイムトラベルもの」をやりたかったのだそうだ。
これまでの時間旅行は、主人公の主観で動くので、過去や未来に場面が変化するが、この作品では
舞台は常に同じ部室で、1幕目が今日、2幕目が昨日、3幕目が再び今日になっている。
この発想は面白くて、映画のようにどんどん画面を切り替えられない舞台向けの仕掛けだと思う。
で、ここからはオッサンの妄言なのでどうでもいいことだが、タイムトラベルの世界観がまんま
「ドラえもん」である。そもそも、タイムマシーンのデザインがドラえもんのものだし、あまりに
ベタだから笑いにしているくらいだ。
どっぷり藤子・F・不二雄世代だなぁ、と思ったけど、これは日本人のある世代以下にしか理解でき
ない知識を前提にしており、観客がすごく限られてくるのではないかと思う。
小劇団なんだから、別にかまわないんだけどね。
それから、基本的なノリがふざけているというか、馴れ合って聴こえるのも、オッサン的にはマイナス
だった。
現役の大学生とか若者が見ると、自分たちの日常とまったく同じテンポやトーンの会話がずっと続いて
いるから、すっと芝居の世界に入れると思うが、そういうのが煩わしくなる歳になると見づらい。
だから、過去を変更したら現在の自分の存在が危うくなる危機感も、ふざけているようにしか見えず、
そこはマジの演技をした方がメリハリがついてよかったんじゃねーの? と思った。
もっとも、いまの若者たちの間の距離感が、真剣な話などできないような、マジモードに入りづらい
ものになっており、それを表現しているとしたら見事だけど。
もうひとつは、恋愛にからむ部分があまりにも薄い。
これも、サークルの仲間には自分の恋愛を言えない最近の若者、という演出なのかな。
理系だけに、そういうドロッとした部分は嫌いなのかもしれない。
テレビ放送では、できるだけ舞台を見ている感覚に近づけようとしており、役者へのクローズアップが
ほとんどなかった。
おかげで、どんな表情をしているのかよく分からなかったのだが、動きが面白かったし、そういうのは
映画などで楽しむべきだろう。
冒頭に、部屋の真ん中に冷蔵庫を置き、扉を開けておけば涼しくなるんじゃね? とバカなことをして
いると、後から部室に入ってきた工学部(?)の人が、よけい暑くなるぞ、と正しいことを言う場面がある。
この視点が、世の中の文系を秘かにバカにしている理系ならではだなぁ、と感心した。
そういや、この芝居は最初以外はまったく音楽がなかったような気がするが、歌や踊りはやらない劇団
なんだろうか? これ一本しか見てないから分からないけど。