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手堅いつくりで面白かった。監督の河野圭太は、フジテレビのドラマ「TEAM」とか「古畑任三郎」
などの演出をしてきた人だそうだ。どうりでうまいと思った。
浅田次郎の原作は、朝日新聞で連載しているときに読んでいたが、もう5年ぐらい前だったので
細かい部分はほとんど忘れていた。
小説の中で、まだ消費者金融の金利が問題になってないときに、銀行からタダみたいな金利で
金を借りて、べらぼうな金利で貸し付ける商売だ、ということを書いていたのを、なぜか憶えて
いる。
【あらすじ】
デパート勤務の椿山課長(西田敏行)は、妻と小学生の男の子がいるサラリーマンだが、ある日
突然死んでしまう。
天国へ行く前に、どうしても遣り残したいことがある人は、初七日まで地上に戻ることができる
システムがあると係の人(和久井映見)に聞き、椿山は手を上げる。
審査の結果、椿山には知らされてない重大な事実があり、それを確かめることを許可される。
他にも、自分の産みの母を知りたい少年や、子分をカタギにもどしたいヤクザ(綿引勝彦)が
同様に地上に戻ることを許される。
地上に戻ってみると、生前とは正反対の姿(伊東美咲)になっており、その姿のまま重大な事実
を調べることになる。
ただし、生きている人に自分のことを喋ったり、生前の復讐をしてはいけない、というルールを
守らなければならない。
美人に変身した椿山は、ボケていたと思っていた父親がボケたふりをしていたことや、妻がずっと
前から自分の部下と付き合っていたことを知る。
だが、重大な事実というのはそのことではないらしい。
はたして、それは何なのか。また、少年やヤクザもきちんと目的を果たせるのか。
残された時間はあと1日になり‥‥
椿山課長、少年、ヤクザの三者三様の事情が、最後になって見事に収斂していくのが見事だった。
小説ではヤクザではなくテキ屋だったと思うのだが、そのあたりの細かい話はカットされている。
綿引勝彦もうまかったが、組長役の國村隼がよかった。
基本的に、伊東美咲は演技がアレなのだが、ただ立っているだけでも美しい人なので、画面が
ダレることはない。
月9ドラマの不振でミソをつけたみたいだが、まだまだいけるんじゃないかと思った。
また、少年が変身した姿が志田未来で、いまやっている「14才の母」よりもちょっと幼く見える。
撮影をいつやったのか分からないけど、子供って数ヶ月で顔が変わるものだなぁ、という月並みな
感想。
これが映画化されたのは、もしかしたらスピリチュアルが流行しているからかもしれない。
私は霊的なものは信じないので、そういう人が出演するテレビ番組は見ない。
しかし、何かで悩んでいる人が、ウソでも霊的なものを利用して楽になるんだったら、やっても
いいんじゃないかとは思う。
問題なのは、けっこうな金額がからむことなんだろうけど。
この映画で描写される天国は、ほとんどの望みがかなう夢のようなところで、だったらさっさと
死んで行ってみたいもんだ、と思う(まあ、私は地獄にしか行けないだろうけどw)。
冒頭に天国についての説明があって、もし天国に行きたくない人は、手元の「永久消滅ボタン」を
押せば、存在が消える。この設定を加えるのは、なかなか気が利いていると思った。
観客は、私以外みんな年配の方々で、やっぱり天国とか生き返ることに興味があるから見に来たの
だろうか。
必見というわけではないけれど、松竹らしいテイストのしみじみした小品でした。