邦画考

週刊SPAは、鴻上尚史のコラムだけを読んでいるのだが、今週のはちょっと面白かった。
近年、日本映画の興行成績がどんどんよくなり、逆にハリウッド映画は大ヒットがあまりない状況に
なっているが、これはなぜだろう、という内容である。
余談だが、1950年代ぐらいまでは、邦画の方が客入りはよかったらしい。


かつては、ハリウッド映画に人がどんどん入り、邦画は誰も見に行かない時代があった。
鴻上は、日本のコンビニやスーパーの便利さを例に出して、なぜ日本の映画だけは過剰なサービス
精神がないのだろうか、という話をしていた。


そりゃ、日本の映画会社が消費者の声を聞かなかったからだよ、と思うのだが、それで何とかなって
いたのは、アニメが頑張っていたからに他ならない。


では、ここのところ邦画が元気なのはどうしてかというと、簡単な話で、テレビ局が制作するように
なったからだ。
なんとなれば、テレビ局は日々視聴率というものと闘っており、視聴者が何を欲しているかを考え
抜いているからである。


ただし、私はここ5年ぐらいでヒットしている邦画が、30年後にも鑑賞に耐え得るかどうかは疑問だ。
そういう、いい意味で作家性のある作品は、アニメ以外はほとんどないのではないか、と思う。
マーケティングが優先されると、とんがった作品はできないのだろう。


一方、ハリウッドはどうか。
一時期、洪水やら隕石やらのパニック映画(Disaster Films)が流行ったけど、これらは「CGすげー」
というだけの内容だった。
音楽と同様、経営のトップに映画を愛している人ではなく、四半期の決算を重視する人がいるから
だろう。


結局、日米ともに作家性を追及したい人は、インディペンデント系の映画に流れるか、別の表現を
模索するしかないのかもしれない。
まあ、あんまり作家性を重視すると、クソつまらない映画ばかりになってしまうんだけどw
才能とお金を管理できるプロデューサーが、個人ではできなくなったっていうことですかね。


あるいは、ミニシアター系の映画でインテリ向けの作品をやって、そこそこ儲けが出るようだったら、
30年後も面白く見られる映画を作る才能が育つやもしれぬ。
ウディ・アレンって、そういう立場の人だろうけど。


例えば、こういう映画を作れる底力が、米国にはまだあるんではないか、と思うのです。

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頭よさげな会話が鼻につくかもしれないけど、饒舌で繊細な恋愛映画である。
もどかしくも、相手の気持ちに踏み込めない男女の心情がウィーンで展開される、とても米国人が
作ったとは思えない名作ですよ。


この監督、調べてみたら「スクール・オブ・ロック」も作ってる。
見る人を選ぶ映画も、大衆を楽しませる映画も両方できる才能って素晴らしい。
たぶん、日本にだってこういう人はいるはず。


本文と写真はまったく関係ありません

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