若者のすべて

若者のすべて [DVD]

若者のすべて [DVD]

原題は“Rocco e i suoi fratelli”(ロッコとその兄弟たち)という。
ほとんどの人が指摘してると思うけど、これってヴィスコンティ版の「カラマーゾフの兄弟」だよね。
3時間近くあるけど、傑作だった。


この映画は、パロンディ家の5人の兄弟がイタリア南部の田舎町からミラノに引っ越してきて、どう
やって生活していったかを描いた大作である。


頑固で我が強い母とともに
長男 ヴィンチェンツォ‥‥先にミラノに出てきており、婚約者がいる
次男 シモーネ‥‥ボクサーになるが、身を持ち崩す
三男 ロッコ‥‥優しくハンサムな青年で、兵役後にボクサーになる
四男 チーロ‥‥夜学に通って学校を卒業し、アルファロメオに就職する
五男 ルカ‥‥小学生ながらアルバイトをして家計を支える
の兄弟たちが登場する。
なお、彼らの父親は田舎で亡くなっている。


これをカラマーゾフの兄弟にあてはめると、
シモーネ→ドミートリー
ロッコ→アレクセイ
チーロ→イワン
ルカ→アレクセイを慕う小学生
となろうか。
フョードルは、舞台が父権主義的なロシアのギリシア正教ではなく、イタリアのカソリックだけに
母親に転化しているのかなぁ、と思うが、よく分からない。


そして、グルーシェンカにあたるのが、ミラノの娼婦ナディアである。
彼女は、最初にシモーネを誘惑するが、後にロッコと出会い更生され、2人は愛し合うようになる。
ところが、それを嫉妬したシモーネは、ならず者たちと組んで、ロッコの目の前でナディアを犯す
のである。


しかし、ロッコはシモーネを赦し、ナディアに対して兄のもとへ行って支えてあげてくれ、と告げる。
ミラノの大聖堂の上で別れを言うシーンは切ない。
ここまで他者に優しいのを見て、こいつはアリョーシャだ、と確信した場面である。
関係ないが、私はこの映画を見て初めて、あのドゥオモって上にあがれたんだ、と知った。
中に入ったことはあったのに‥‥。もったいないことをした。


で、なんだかんだあって、結局ナディアはシモーネに殺されるのだが、このときナイフを持って
近寄るシモーネに対して、ちょうどキリストが磔刑になるようなポーズで刺される。
見ていてギョッとする場面だ。(←神殺しか?)


イタリア映画では、大家族が食事をしている場面がやたらと多いような気がするけど、近代以前の
食事風景というのは、世界中でそうだったのかもしれない。
核家族っていうのは、アングロサクソン民族の奇習なのかな。


この映画では、兄弟がバラバラになって終わるのだが、母親から逃れた長男のヴィンチェンツォや、
勉強して工場に就職した四男のチーロは幸せになる。
誰よりも家族の絆を信じていた三男ロッコや、それに甘えていた次男シモーネは、近代化できなかった
人間として描かれている。


もちろん、ヴィスコンティ監督は、近代化した方がいいのだ、とも、旧弊な家族主義が大事だ、とも
語っていないけれども、都会で翻弄されていく地方の一家族をじっくり描写することで、イタリアは
どうなるのかねぇ? と問いかけているような気がする。


若者のすべて」が発表された1960年には、フェデリコ・フェリーニの大作「甘い生活」も公開
されている。どんだけイタリア映画がすごかったかが分かる。


それにしても、監督がバイセクシャルなせいか、女はわりとぞんざいに扱われているが、主演の
アラン・ドロンはめちゃくちゃセクシーに撮られていた。
そりゃ、日本でもハンサムの代名詞になるはずだよ。


本文と写真はまったく関係ありません

ノリo´ゥ`リ<大勢でご飯を食べるのは楽しいよ♪