僕の歩く道

草磲剛が主演するドラマ「僕の歩く道」の第1回を見た。
自閉症の人を主人公にした作品というと、ほとんどの人はダスティン・ホフマン
レインマン」を思い浮かべるのではなかろうか。


この「僕の歩く道」というドラマは、03年に制作された「僕の生きる道」、04年の
僕と彼女と彼女の生きる道」に続く三部作のラスト、という位置づけにある。
出演する俳優が同じな部分はあるものの、まったく別の独立した物語だが。


しかし、この3作品の脚本はすべて橋部敦子が書いており、何らかの共通項がある
ように思える。
私は仮にそれを「聖なるもの」と名づけてみたい。


一作目の「僕の生きる道」では、胃癌で余命いくばくもない高校教師が、残りの
人生をどう生きるか、という話で、人間の尊厳と死=聖なるものを描いている。


二作目の「僕と彼女と彼女の生きる道」では、突然妻に家出をされた銀行員が
残された娘とどう生きるかを模索する話で、子ども=聖なるものを描いている。


三作目の「僕の歩く道」では、自閉症の青年が(たぶん)周りの人に受け入れて
もらうまでの話だと思うのだが、この自閉症の青年=聖なるものと考えられる。


つまり、日常にはふつう現れない聖なるものが、ポンと放り込まれたとき、いったい
人間はどういう行動をとり、いかにそれを守るか、というのが三部作のテーマでは
ないかと思う。こじつけっぽいかな。


もうひとつのテーマは、親の不在だろう。
一作目は主人公に父親がいない。二作目は母親がいない。三作目はまだ分からないが
自閉症の青年の父親は登場していない。


これまたこじつけて考えると、もはやセイフティーネットがなくなってしまった
社会の不安が、ドラマの中に無意識に現れているのかもしれない。
ともかく、設定が本当に上手いので、ドラマ好きにはたまらない作品群だと思う。


また、草磲剛のプレーンな演技力も高く評価したい。
教師、サラリーマン、障害者、官僚などなど、どんな役もハマるというのは、大変な
才能と努力がないと無理だろう。
一方で、バラエティ番組での応用のきかなさを見ていると、なぜこんなに不器用なの
か、本当に不思議だ。


私が映画会社に勤めているなら、「寅さん」に代わる長期シリーズの主役を彼で
企画するだろう。
決して派手ではないが、10年でも20年でもクォリティの高い芝居ができる役者だと
思う。


ところで、草磲剛が主演するドラマで使われる SMAP の主題歌は大ヒットするという
ジンクスがあるが、今回はどうだろうか。


本文と写真はまったく関係ありません

私も「僕の歩く道」に出ています!