さよなら小津先生

02年にフジテレビで、田村正和主演の「さよなら小津先生」というドラマが放送された。
この作品は、大手銀行をクビになった男が、生活のために持っていた教員免許を利用
して、底辺高の社会科教師になる話だ。


最初は、すぐに別の金融機関に再就職するつもりだったので、教えることに何の情熱も
ない。しかし、バスケットボール部の顧問になったことで、しだいに生徒たちと関わって
いき、やがて教育することに目覚める、というストーリーになっている。


そこそこ面白いドラマだったが、視聴率はそれほど良くなかったと思う。
田村正和と今どきの高校生の組み合わせが、ちょっと消化不良だったせいかも
しれない。


私が気がついたのは、職業の互換性についてである。
銀行員→高校の社会科教師は可能だが、逆は不可能だ。
これは、割と多くの職業についても当てはまる。


例えば、製薬会社研究員→高校の化学教師は○だが、逆は×だ。
あるいは、商社の米国駐在員→高校の英語教師も同様。
画家や作家や音楽家は、教師になれるが、教師が画家や作家や音楽家になることは、
あまりない。


こう書くと、教師を舐めんなよ、と思う人もいるだろう。
教える技術というものは、一朝一夕に身につくものではないのだ、と。


もちろん、そうかもしれない。
だが、あまりに世の中を知らない人も多いのではないか? 


私が高校3年のとき、進路面談があり、将来どういう職業に就きたいかを聞かれたことが
ある。当時は糸井重里などのコピーライターが流行っており、私は広告関係の仕事に
就きたいです、と答えた。


すると、私の担任の数学教師は、お前は看板屋にでもなるつもりなのか、と吐き捨てる
ように言った。
確かに、私の成績は良くなかった。特に数学は最悪だったので、担任はムカついていた
のかもしれない。


それにしても、看板屋とは‥‥。
いくら田舎の高校教師とはいえ、広告代理店というものがあることぐらい知っておいて
くれよ、と私は顔に出さずに思った。


この一例をもって、すべての教師に敷衍するつもりはないのだが、私の印象としては、
一般的に教職に就いている人は、世の中のことをあまりご存知ないようだ。


なので、今後、もし教職の資格を取る場合は、必ず民間企業で3年ぐらい仕事をしな
ければならないようにすべきではないか。
ドラクエで賢者になるには、僧侶+魔法使いの呪文を全て憶えていなければならない
ように、教育する人は一般企業+教職過程を修めてから、ダーマ神殿(?)に向かうべき
だと思う。


それが嫌で、どうしても子供を教えたければ、学習塾の講師になればいい。
これは届出も資格も必要ないから、生徒が集まれば可能ですよ。