引越しと荷物

私はこれまでに11回ほど引越しをしている。
そのうち6回は高校入学までで、親は別に転勤族でもないのに、松山市内をぐるぐると
移動していた。


自分で決めた引越しは、新しい生活への希望とか前向きなものがあるが、親が決めた
引越しは違う。
せっかく慣れた環境から引き剥がされるような痛みがあった。
住み慣れた家を出るたびに、思い出をポロポロこぼしていくような、哀しい感じがした。


子供のころに、あまり頻繁に引越しをすると、情緒不安定になるのではないかと思うの
だが、どうなんだろう? 別に因果関係はないのかもしれないが。


世の中には、引越しが趣味という人もいて、どういう神経をしているのかと思う。
不動産屋や運送屋に払う金もバカにならないだろうに。
トランク一つだけで移動できるような生活をしているのだろうか。


そういえば、私は西荻三鷹へ引っ越すときに、自分でレンタカーの軽トラックを借りて、
友だち3人に手伝ってもらって、運送屋を使わずに荷物を運んだことがあった。
6畳+4畳半(風呂なし)の部屋から、6畳+3畳(風呂付き)の部屋へグレードアップ(?)で
ある。


当時、私は映画をVHSテープに標準で録画してコレクションしており、マンガや文庫本など
と合わせると、ものすごい数の段ボール箱になった。
一度では運びきれず、三往復したと思う。
友だちの一人が、ピラミッド作ってんじゃねぇぞ、と怒ったぐらいだ。
いま思うと、本当に申し訳ないことをした。ごめんなさい。


作業は夜中までかかり、友だちに焼肉をおごって、サウナに入って仮眠をとった。
レンタカーを返却するのが翌朝になってしまい、こりゃ素直に運送屋を使った方が安く
ついたかなぁ、とレンタカーの事務所へ行くと、なんと前日までの料金で精算して
くれた。あれはラッキーだった。


2月に引越したのだが、段ボールをすべて片付けられたのはゴールデンウィークだった。
もう、引っ越すだけで燃え尽きてしまい、しばらくは段ボール箱の間で生活していた
ようなもんだった。つくづく、荷物は少ないにこしたことはないと思った。


しかし、私はモノに執着するタイプらしい。
いま、身の回りを見渡したら、やはりモノだらけになっている。
たぶん、インテリアについて、自分の明確なイメージが全くないので、ただ荷物を置く
だけの生活になっているからだろう。


いや、私とて、アーカイブと呼ぶにふさわしい書庫とかシアタールームなんかを夢見る
こともある。けど、金が無い。清々しいほど無い。
かくして、ガラクタだけがどんどん溜まっていくのである。ああ。


本文と写真はまったく関係ありません

(マレー鉄道の車窓から)