偽善系

偽善系―正義の味方に御用心! (文春文庫)

偽善系―正義の味方に御用心! (文春文庫)

日垣隆は狂犬のような人である。
誰かを襲っているのを遠くで見ているときは面白いのだが、こちらが標的になると
これほど恐ろしいものはない。
お忙しいでしょうから、一般の人間を相手にする暇などないだろうけど。


徹底的なリサーチで言質をとり、相手を挑発する文章は、読んでいて不快になる人がいる
かもしれないが、これは正しいよなぁ、と納得することが多々ある。
それにしても、どのくらいのスピードで本を読んでいるのやら。恐ろしいばかりだ。


実は、日垣隆の青年期は壮絶だ。
15歳のとき13歳の弟を、同じ中学に通っていた奴らに虐め殺される。もちろん、未成年と
いうことで罪にはならなかった。
高校生のときには兄が統合失調症になる。
彼が、少年法や刑法39条(心神喪失)に徹底的にこだわるのも無理はない。


また、彼は18歳まで、ほぼ読書の習慣がなく、そこから一日一冊の本を読むことを自分に
課している。
それを今でも続けているということだが、私にはどうかしてるとしか思えない。
日垣隆が、ある種、人を苛立たせるような性格なのは、ティーンエイジの時の読書経験が
ないからだ、と言うと鼻で笑われるだろうか。


それでも、自分のサイトから発信している有料メールマガジンの読者は相当いるという。
好き嫌いがハッキリ分かれる芸風だから、応援する人もたくさんいるのですね。(参照

私がこの本で面白かったのは、少年法や刑法39条の話題もだが、「日本人の死に方」考、
という章だった。


1985年の日航機墜落事故の飛行機に乗る予定だった人が、たまたま乗り遅れてしまい
新幹線で大阪に戻った。命拾いをしたと思って酒を飲み、夜中に風呂に入って、滑って
頭を打って亡くなった。本当の話だそうだ。
実は、風呂場で転倒して亡くなる人は、年間に3000人以上おり、航空機事故より圧倒的に
多いらしい。


メディアは派手な事故で亡くなった場合は、大々的に報道するが、地味な死に方の
場合は触れない。だから、大騒ぎをしているが大したことはないことと、誰も言って
ないけど重大なことを見分ける力がないと、騙されっぱなしになる。


本来は、大手メディアの人間がそうしなければならないのだろうけれど、そうなると
日垣隆の商売も上がったりだろう。
世の中の権力にアホがいるおかげで、ガンガン喰い付いていけるのは、皮肉な生き方かも。